レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置をはじめとする粒子の光散乱(光の回折、屈折、反射、吸収を含む広義の意味での散乱)の光量を測定する装置では、分散媒と粒子の屈折率と粒子の径、および光源波長は最も重要な因子です。
一例として、粒径パラメータα=πD/λ (D:粒径、λ:光源波長)を変数にして、屈折率の差による散乱光強度を下図に示します。
散乱現象は図に示すように粒子径と屈折率で敏感に変化します。透光性が少ない大きな粒子径では回折現象が支配的な散乱現象となり、屈折率の影響は少ないのですが、粒子径が小さな透光性粒子では粒子と分散媒界面における反射、屈折、粒子内の減光および粒子内面の反射など、屈折率により変化する様々な現象が大きな影響を持ってきます。
粒径パラメータによる散乱光強度分布の変化
現在市販されているレーザ回折・散乱式粒子径測定装置は、その測定原理として、Mie散乱理論を使用しているものがほとんどです。
この理論は現状最も優れた粒子の散乱現象の説明理論で、一般的にはこの理論で計算された理論光量が単一の粒子情報として、散乱光量分布から粒子径分布を計算するパラメータに使用されます。
もちろん、この理論は、波長を一定とすると、粒子径と屈折率の関数であり、粒子径を正確に求める意味から屈折率の正確な入力が必要となります。
一方、この重要なファクターである屈折率に関して、液体の光学特性は各種文献、資料に記載されていますが、粒子を構成している物質に関しては充分とは言えないのが現状です。
また複合粒子など複数の物質で構成されている粒子に関して、構成物質比率、混合状況など一義的に屈折率が決定できないような粒子もあります。
屈折率の重要性は粒径測定装置にとっては変わりませんが、屈折率が正しく入力できない測定もあるのも事実です。
この様な事例に関しての一般的な対応としては、
1.再計算機能がある測定器では、ある適当な屈折率で測定した結果に屈折率入力値を変更し、再計算させ、幾つかの計算結果を求めてみる。
それら結果の粒子径分布形状、粒子径などを比較し、最適な屈折率を決定します。比較の方法に関しては幾つかが提唱されているので、文献等で確認することを薦めます。 再計算機能がない装置では屈折率を変えて幾つかの測定を実施し、前述と同様な比較を行います。
2.屈折率の入力を必要としない他の測定装置の結果と比較する。
この場合、測定原理が異なるので、絶対値を比較することはできませんが、分布形状などは参考になります。多くの金属粒子は表面での反射光量が高く、透光性が極めて低い(粒子内での光の減衰が大きい)ので、粒子測定で使用される屈折率は高い数値を入力するか、金属粒子測定専用のモードを使用して行われるのが一般的です。