また、脱着等温線は細孔径が変化しても、すべて同じ相対圧で吸着側に閉じるという現象がある(特殊なロープレッシャーヒステリシスを除く)。これより脱着の閉じる原因は細孔径によらず、吸着温度における吸着質の物性によるものであり、細孔内に凝縮した吸着相のキャビテーションによるものと考えられている。キャビテーションの起こる脱着側等温線からの細孔分布解析においては、必ず3.4 nm付近の細孔ピークが現れるが、これは材料の細孔を意味しないので、無視する必要がある。
赤い丸印は吸着側等温線から求まった細孔ピーク(29 nm)であり、青い丸印は脱着側等温線から求めたものを示す(18 nm)。両者には約10 nmの差がある。材料をスライスし電子顕微鏡観察した写真と比較すると、吸着側から求めた径が材料の細孔を良く表していると考えられる。またこの材料の場合不均一な細孔が複雑に連結していることが分かる。ガス吸着は材料の細孔情報を得るには有効な方法であるが、細孔形状を特定することは現在のところできない。それ故、文献を調べたり電顕観察し細孔形状を推測した上で、適切な細孔分布解析理論を選択する必要がある。