本書は「第11回微粒化シンポジウム」(2002年12月)での学会発表を要約したものです。
参考文献: 第11回微粒化学会論文集 P174
概要
レーザ回折による噴霧粒径を計測する方法は、噴霧全体の粒径を簡単に再現性よく計測できる点ですぐれており、広く使用されている。
しかし、この計算アルゴリズムは多重散乱を起こさない十分薄い粒子群を前提にしている。
したがって粒子濃度が高くなると多重散乱の影響で粒径データが小さくなり透過率30%~40%程度までのデータが許容できる限度であった。
この問題解決の一方法として高濃度噴霧を十分に薄い層がN層あると仮定し、1層目での散乱光が2層目で多重散乱すると、どのディテクタに検出されるか確率分布を計算する。この計算を繰り返し最終層まで計算する事により高濃度での散乱光を計算する。この散乱光の計算値と高濃度噴霧の測定値から一層当たりの散乱光を求め、その粒子径分布をもとめる。
(特許取得済み)
測定データ
高濃度粒子群の測定方法として粉体をガラスセルに分散して透過率80%程度の濃度からその濃度を逐次濃くしてその粒子径分布を測定した。
粉体の粒子径分布は濃度に関係なく一定である。
濃度を濃くした時の散乱パターンの変化と従来の方法による粒子径分布の違い及びロージンラムラー分布を仮定した前述の方式による多重散乱補正による結果を示す。
透過率82.88%での散乱パターンFig.4は透過率3.98%での散乱パターンFig.6と多重散乱の影響により全く異なったパターンになっている。
従って透過率3.98%の従来の結果は透過率82.88%の粒子径分布と大きく異なる。
同様にFig.9は透過率2.95%での多重散乱補正による結果である。
同一の測定データをSMD及びD50に関して従来の計算と多重散乱補正した値をFig.10に示す。従来の計算では透過率30%程度からSMD及びD50は小さくなっているが、多重散乱補正したSMD及びD50は透過率数%程度まで透過率60%~80%の値と同じ値になっている。
まとめ
高濃度の粒子群の粒子径分布測定において、測定散乱光を多重散乱補正を行うことによってレーザの透過率で4~6%程度までは十分信頼できるデータが得られた。
この補正方法は噴霧の粒子径分布のモデルを仮定するという制限があるが、ほとんどの噴霧は分布関数で表すことができる。また、多重散乱を散乱光に関して厳密にシミュレートしており粒子の分布幅や粒径には直接影響をうけない。従って前方散乱がほとんどである、数ミクロンより大きい噴霧に関して多重散乱の影響を補正して測定可能となると思われる。
本書の測定装置「LDSA-1400A」は生産終了となっております。