当社は40年以上にわたるレーザ回折装置のグローバルリーダーです。
装置に関する技術を継続的に改善し、粒子径測定と物性評価に最適なレーザ回折装置の製品群をお客様に提供しています。
レーザ回折・散乱式装置(LD)は、静的光散乱式とも呼ばれ、ふるい分けと共に最も一般的な粒子径分布測定装置のひとつです。
この方法は、湿式または乾式の状態で分散した粒子にレーザ光を照射することで発生する散乱光パターンを検出します。散乱光パターンは粒子径により決定され、その方法論は、ISO13320に記載されています。 以下に、レーザ回折・散乱式の利点、限界、測定機構、及び、測定原理について説明します。 マイクロトラックは、1970年代に世界で初めて商品化されたレーザ回折・散乱式装置です。それ以来、フロントランナーとして革新を続けてきています。
最新のレーザ回折・散乱式装置は、非常に広い測定範囲で粒子径分布を測定することが可能です。一般的には、20nm~2mmの粒度範囲をカバーしています。これは、測定可能な最小の粒子と最大の粒子の間のファクターが10万に相当します。実際には、30nm~1,000µm程度の粒子径範囲で使用されています。マイクロトラックでは、レンズを移動させたり、適切な光学系を選択したり、測定前に調整する必要はありません。
レーザ回折・散乱式装置は、様々な産業分野において、日常的な分析や品質管理だけでなく、要求の厳しい研究開発でも使用されています。これは、懸濁液やエマルションなどの湿式サンプルと乾燥粉体の両方を簡単に測定できるためです。湿式測定では、超音波プローブを内蔵した強力な循環器により、多くの場合、サンプルの前処理を装置内で行うことができます。乾式測定では、圧縮空気の流れの中でベンチュリーノズルを使って粒子を分散します。
短い測定時間は、レーザ回折・散乱式装置の大きな利点です。一般的な湿式測定手順:(1) 給水ポンプによる自動給液、(2) セットゼロ(試料を含まないブランク測定)、(3) 試料の投入、(4) 測定(散乱光データ取得)、(5)自動洗浄。超音波ホモジナイザによる分散処理の有無や洗浄回数にもよりますが、測定時間は1~2分間です。乾式測定の場合、更に測定時間は短く10~40秒間です。
標準操作手順(SOP)を使用することで、常に同じ測定条件とすることができます。これにより、異なる場所に設置されている装置間でも測定条件設定ミスが生じることなく、高いデータ一致性を実現します。レーザ回折・散乱式装置の健全性は標準粒子を用いて確認することが可能です。ISO13320に測定精度および再現性の要求事項について記載があり、マイクロトラックは十分にその要求を超えて優れています。なお、ユーザによる装置のキャリブレーションは不要です。
レーザ回折・散乱式装置は、堅牢性が高く、メンテナンスの必要性があまりありません。振動など外部環境の影響をほとんど受けないため、ラボ室ではなく生産現場に設置される場合も多くあります。マイクロトラックは、半導体レーザを採用することで更にメンテナンスを低減しています。マイクロトラック以外の多くの装置では、HeNeガスレーザを採用しており、定期的な交換の他にも測定前のウォームアップが必要となっています。
レーザ光(単色、コヒーレント、偏光)が物質に当たると回折現象が発生します。例えば、回折現象は、開口部、スリット、格子、および、粒子から観察されます。
粒子エッジ部分からの散乱光は、球形波面の形で伝搬し、干渉現象をもたらします。散乱光の回折角は、光の波長と粒子の大きさによって決まり、粒子が大きくなると回折角度が小さくなります。
一般的な中程度サイズの粒子では、ミー散乱理論を散乱パターンに適用して粒子径を決定できます。大きな粒子では、小さな粒子よりも前方方向に狭い角度で強い散乱パターンとなります。非常に小さい粒子では、レイリー散乱理論が適用され、その散乱パターンは全ての空間方向でほぼ同一となります。
レーザ回折・散乱式装置は、粒子からの散乱光を可能な限り広い角度で検出できるよう光学系を工夫されています。 大きな粒子からの散乱光は小さな角度に強い散乱光パターンとなり、小さな粒子からの散乱光は広い角度に散乱パターンを持ちますが、散乱光は特定の角度だけに散乱するわけではなく、粒子の全周に散乱していることに注意が必要です。 粒子径の異なる多くの粒子からの散乱光が重なって検出器で受光され、二次的な特性である散乱パターンとして認識し計算されます。 また、マイクロトラックでは、散乱パターンは球形粒子、または非球形粒子の何れかを選択しますが、短径・長径など不規則な粒子形状を考慮することはできないため、粒子径分布の解釈には注意が必要です。
レーザ回折・散乱式装置の測定範囲上限は、粒子径が大きくなるにつれて散乱角度が小さくなり、粒子径間のわずかな差を計測的に検出することが難しくなることに依ります。 一方、測定範囲下限は、小さな粒子からの散乱光強度が弱いことに依存しています。
ISO 13320では、レーザ回折・散乱式装置の光学系として、フーリエ光学系または逆フーリエ光学系を記載しています。フーリエ光学系では、粒子に対して平行光を照射しますが、逆フーリエ光学系では、収束光レーザービームが使用されます。
フーリエ光学系では、レーザービーム内の粒子の位置に関わらず、回折信号が常に正しく検出されるという利点があります。
一方、 逆フーリエ光学系では、粒子の流れを比較的狭くする必要があり、さらに、収束光の中の同じサイズの粒子でも、光軸に対する回折角度が異なります。このため、フーリエ光学系に比べて回折パターンがぼやけてしまうのです。
逆フーリエ光学系の利点は、より小さな検出器でより広い散乱光角度を検出できることです。 しかし、適切な光学設計を行えば、フーリエ光学系でも0~163°の散乱光角度範囲をカバーすることができることから、マイクロトラックレーザ回折・散乱式装置は、フーリエ光学系を採用しています。
フーリエ光学系(左、マイクロトラック)および逆フーリエ光学系(右)によるレーザ回折・散乱式装置
レーザ回折・散乱式と 静的光散乱式 は、しばしば同じ意味で使用されますが、レーザ回折・散乱式という用語は多くの産業や研究分野で定着しています。 レーザ回折・散乱式では、粒子径に応じた特徴的な散乱光強度分布が生じます。この散乱光強度分布は、いわゆるフラウンホーファー回折理論に基づきます。フラウンフォーファー回折理論の利点は、試料の屈折率など材料特性が必要ないことです。しかし、このアプローチは、光透過性のある微粒子には適用できません。粒子の光学的特性も散乱光強度分布に影響を与えるからです。 この場合、粒子径分布を評価するためには、粒子屈折率などの光学特性が必要です。 このような評価は、物理学者Gustav Mieにちなんで名付けられた 「ミー散乱理論」に基づいて行われます。厳密に言えば、フラウンホーファー回折理論はミー散乱理論の一部であり、ミー散乱理論は、すべての回折・散乱現象を包括的に表します。
レーザ回折・散乱式は、最も一般的な粒子径分布測定方式です。湿式、または、乾式で分散している粒子にレーザ光を照射し、発生する散乱光パターンを検出して粒子径分布を求めます。
測定技術は、ISO13320「粒子径分布-レーザ回折・散乱」に記載されており、その計算方法及び表示方法については、ISO9276-1及びISO9276-2「粒子径分布測定結果の表現」第1部及び第2部に記載されています。
一般的に、湿式測定では1~2分間、乾式測定では10~40秒間です。
レーザ回折・散乱式の利点には、広い測定範囲(20nm~2mm)、汎用性(さまざまな物質を測定可能)、高いサンプルスループット、容易な測定操作、正確性、再現性、及び、堅牢性などが挙げられます。
一般的に、レーザ回折・散乱式装置は、20nm~2mmの粒子径分布範囲をカバーします。大部分の用途では、30nm~1mmの粒子径分布測定に使用されます。
レーザ回折・散乱式装置は、研究開発、及び、品質管理で使用されます。研究では新たな材料を探索・開発し、品質管理においては、製造された製品の適合性を評価します。