静的多重光散乱法(SMLS)は、コロイド・スラリー・エマルジョンなどを希釈することなく、その粒子径や濃度を測定可能にする技術です。この技術を用い、TURBISCANシリーズは希釈等の操作でサンプルを傷つけることなく、遠心力などの物理ストレスを加えることなく、“ありのままの姿” でサンプルの分散状態の変化を測定し、分散安定性を評価することが可能です。
さらに、TURBISCAN STABILITY INDEX (TSI)を用いることで、分散状態の変化を数値化することが可能となりました。分散安定性評価の世界標準として、TURBISCANシリーズは幅広い分野で使用されています。
静的多重光散乱法 (SMLS) は、希釈せず、機械的ストレス(遠心力等)を加えることなく、分散液を「そのままの状態」で評価するのに最適です。
従来、エマルジョンや懸濁液の特性評価をする場合、原液のままでは濃度が高すぎるため、「そのままの状態」では評価できず、希釈や機械的ストレス(遠心力等)が必要でした。しかし、静的多重光散乱(SMLS)技術 を用いれば、希釈することなく、高濃度サンプルの分散状態とその経時的な変化を評価することができます。
SMLS は希釈を必要としない分散液の特性評価方法として、有効保存期間および安定性測定に関するISO TR13097 に準拠しています。
近赤外線(NIR)光源から光子をサンプルに照射し、分散液中の粒子(または液滴)により散乱された光子を後方散乱光 (BS) として、透過した光子を透過光 (T) として、2つの検出器により同時に検出します。
後方散乱光は、光子が1回散乱するまでに進む距離の平均値=光子の輸送平均自由行程 (l*)に関係する一方、透過光は、分散粒子間の距離=光子の平均自由行程(l)に関係しています。透過光と後方散乱光の強度は、いずれも粒子径と分散液の濃度に依存します。
TURBISCANは静的多重光散乱法(SMLS)を採用し、サンプルの高さや時間の推移による透過光あるいは後方散乱光の強度が示す変化を測定します。この測定によって、粒子径の変化や濃度変化(沈殿、クリーミング)をモニタリングすることが可能です。以下の式を用いるミー(Mie)理論に基づいて、後方散乱光や透過光の強度から、平均粒子径を算出することができます。
TSIはサンプルの分散状態の変化を示すシグナル変動の合計であり、スキャンごとに検出されたすべての分散状態の変化を数値化したパラメーターです。より高いTSI値は、より大きな分散状態の変化を示します。
TSIを用いる利点は、数値化された結果を元に、サンプルの分散安定性の良否判断や、サンプル間での安定性の比較が容易になることです。元来は研究開発や品質管理向けに開発されたパラメーターですが、学術誌で発表される論文にも使用されています。このことは、TSIが、サンプル間の分散安定性を比較したり、有効保存期間を測定するに際して参照すべきパラメーターとして認知されていることの証左といえます。
分散液は熱力学的に不安定です。時間の経過とともに、分散液のエネルギーが減少して行き、最終的にエネルギーが最小で最も安定した状態に達します。これにより、通常は完全な相分離が起こります。熱力学的により安定な状態に移行するメカニズムは複雑であり、無数のパターンが存在しますが、主に2つのカテゴリーに分類されます。
後方散乱光 (BS) および/または透過光 (T) の信号強度を測定することで、サンプルの分散状態の変化を検出し、数値化することが可能です。後方散乱光と透過光の信号強度はともに、粒子濃度や粒子径に依存します。
高さ方向にサンプル全体をスキャンし、後方散乱光と透過光の強度を経時的に記録することで、サンプルの安定性・不安定性に関する正確な情報を得ることが可能です。
サンプル同士を客観的に比較するためには、個々のサンプルにおける分散状態の変化を数値データに基づいて比較する必要があります。これが、TURBISCAN STABILITY INDEX (TSI) を用いる理由です。TSIは、サンプルの分散状態が変化する推移を数値化する客観的なパラメーターです。
TSIの計算は、各測定位置 (h) の後方散乱光と透過光の変化を合計するアルゴリズムに基づいています。
TURBISCANによって得られた測定データから、TURBISIZEはわずか数秒で粒子径・粒度分布と移動速度を導出できます。これは、ISO 13317(重力沈降法による粒子径分布の導出)に準拠し、サンプルを希釈せずに測定可能です。
粒子の移動データから、TURBSIZEは以下を算出可能です。